【解析学】実数列の極限の性質は? 証明も合わせて紹介
こんにちは!半沢です!
今回の記事では,前回の記事に引き続き,解析学における実数列の極限について解説したいと思います。
前回と異なり,数列の極限の性質を中心に解説をしていきます。
ぜひ読んでいってください。
実数列の極限
※多くの場合,興味のあるものは収束する場合なので,ここで紹介する性質は極限と言っても収束に関するものがほとんどです。
また証明も載せておりますので,気になる方はそちらを確認していください。
極限値の一意性
極限値の一意性
極限値が存在するなら,それはただ一つである。
基本的な性質
\(\varepsilon\text{-}N\)論法の良い練習となるので,これらの性質を証明してみることをおススメします。
\([1]\)収束数列の有界性
収束する数列\(\{a_n\}\)は有界である。
\([2]\)順序の保存
\(a_n\leq b_n\)かつ\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=\alpha,\lim_{n\to\infty}b_n=\beta\)ならば\(\alpha\leq\beta\)である。
\([3]\)はさみうちの原理
\(a_n\leq b_n\leq c_n\)で,\(\{a_n\},\{c_n\}\)がともに同じ値\(\alpha\)に収束するとすると
\(b_n\)も同じ\(\alpha\)に収束する。
\([4]\)\(\pm\infty\)と順序
\(a_n\leq b_n\)が成り立つとき
\((\,\mathrm{i}\, )\quad a_n\to\infty\Rightarrow b_n\to\infty\)
\((\,\mathrm{ii}\, )\quad b_n\to -\,\infty\Rightarrow a_n \to -\,\infty\)
特に順序に関する\([2],[3],[4]\)は度々用いるので押さえておきましょう。
\([5]\)四則演算との整合性
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=\alpha,\lim_{n\to\infty}b_n=\beta\)とすると
\((\,\mathrm{i}\, )\quad \displaystyle\lim_{n\to\infty}(a_n\pm b_n)=\alpha\pm\beta\quad\)(複合同順)
\((\,\mathrm{ii}\, )\quad \displaystyle\lim_{n\to\infty}c\,a_n=c\,\alpha\quad\)(\(c\,\)は定数)
\((\,\mathrm{iii}\, )\quad \displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n\,b_n=\alpha\,\beta\)
\((\,\mathrm{iv}\, )\quad \displaystyle\lim_{n\to\infty}\dfrac{b_n}{a_n}=\dfrac{\beta}{\alpha}\quad(a_n\not=0,\quad\alpha\not=0)\)
このような極限の等式は左辺の極限が存在して,かつ等号が成り立つことを言っていることに注意してください。
単調数列の性質
まずは知らない方のために,単調数列を定義したいと思います。
定義
任意の\(n\in\mathbb{N}\)について
\(a_n\leq a_{n+1}\)が成り立つとき\(\{a_n\}\)を単調増加数列
\(a_n\geq a_{n+1}\)が成り立つとき\(\{a_n\}\)を単調減少数列と呼び,
単調増加数列と単調減少列を合わせて単調数列と呼ぶ。
このとき次のことが成り立ちます。
上に有界な単調増加数列はその上限に
下に有界な単調減少数列はその下限に収束する。
つまり有界な単調数列は収束する。
こちらの命題は正項級数の収束判定に関係してくるので,押さえておきましょう。
まとめ
今回の記事では実数列の極限をその性質を中心に解説いたしました。
証明も載せているので,そこで\(\varepsilon\text{-}N\)論法の雰囲気を味わうことをおススメします。
もし「説明がわかりにくい」などご要望・ご感想がありましたら,
X(旧:Twitter)で#トイカラでつぶやいていただけると,できる限り対応します。
ここまで読んでいただき,ありがとうございました。
参考図書
- \([1]\) 吹田信之,新保経彦.”理工系の微分積分学”.初版.学術図書出版社.1987出版.p.7-10
証明
極限値の一意性
極限値の一意性
極限値が存在するなら,それはただ一つである。
[証明]\(\quad\)任意の実数列\(\{a_n\}\)について
\(a_n\to\alpha\)かつ\(a_n\to\beta\Rightarrow\alpha=\beta\)を示せばよい。
仮定から任意の正数\(\varepsilon\)に対して,ある自然数\(N_{\alpha},N_{\beta}\)を取ってくることで
\(|a_n-\alpha|\lt \dfrac{\varepsilon}{2}\quad(n\geq N_\alpha)\)
\(|a_n-\beta|\lt \dfrac{\varepsilon}{2}\quad(n\geq N_\beta)\)
とできる。
そこで\(N=\max\{N_{\alpha},N_{\beta}\}\)として,自然数\(N\)を取ってくることで
つまり任意の正数\(\varepsilon\)に対して,\(|\alpha-\beta|\lt \varepsilon\)を示した。
これは前回の記事の導入で証明した命題より\(\alpha=\beta\)を意味する。
したがって題意は示された。\(\quad\square\)
基本的な性質
\([1]\)収束数列の有界性
収束する数列\(\{a_n\}\)は有界である。
\([2]\)順序の保存
\(a_n\leq b_n\)かつ\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=\alpha,\lim_{n\to\infty}b_n=\beta\)ならば\(\alpha\leq\beta\)である。
\([3]\)はさみうちの原理
\(a_n\leq b_n\leq c_n\)で,\(\{a_n\},\{c_n\}\)がともに同じ値\(\alpha\)に収束するとすると
\(b_n\)も同じ\(\alpha\)に収束する。
\([4]\)\(\pm\infty\)と順序
\(a_n\leq b_n\)が成り立つとき
\((\,\mathrm{i}\, )\quad a_n\to\infty\Rightarrow b_n\to\infty\)
\((\,\mathrm{ii}\, )\quad b_n\to -\,\infty\Rightarrow a_n \to -\,\infty\)
[証明]\([1]\sim [4]\)を順に示していく。まず\([1]\)である。
\(\{a_n\}\)は収束するので,その極限値を\(\alpha\)とおく。
収束の定義で\(\varepsilon=1\)とすれば,ある自然数\(N\)が存在して
\(n\geq N\Rightarrow |a_n-\alpha|\lt 1\)が成り立つ。
ここで\(K=1+|\alpha|+\max\{|a_1|,\ldots,|a_{N-1}|\}\)とおくと
\(1\leq n \lt N\)のとき
\(K\geq \max\{|a_1|,\ldots,|a_{N-1}|\} \geq |a_n|\)
\(n\geq N\)のとき
つまり任意の\(n\in \mathbb{N}\)について\(|a_n| \leq K\)より\([1]\)は示された。
次に\([2]\)について証明する。
仮定より任意の正数\(\varepsilon\)に対して,ある自然数\(N_a,N_b\)を取ってくることで
\(|a_n-\alpha|\lt \dfrac{\varepsilon}{2}\quad(n\geq N_a)\)
\(|b_n-\beta|\lt \dfrac{\varepsilon}{2}\quad(n\geq N_b)\)
とできる。
そこで\(N=\max\{N_a,N_b\}\)とおけば,
\(|a_N-\alpha|\lt \dfrac{\varepsilon}{2}\)より,\(\alpha-\dfrac{\varepsilon}{2}\lt a_N\)
\(|b_N-\beta|\lt \dfrac{\varepsilon}{2}\)より,\(b_N \lt \beta+\dfrac{\varepsilon}{2}\)
であるので,
\(\alpha-\dfrac{\varepsilon}{2}\lt a_N \leq b_N\lt \beta+\dfrac{\varepsilon}{2}\)
つまり任意の正数\(\varepsilon\)について\(\alpha-\beta\lt\varepsilon\)が示された。
ここで仮に\(\alpha-\beta\gt 0\)とおくと,\(\alpha-\beta\)自身が正数となる。
故に\(\varepsilon=\alpha-\beta\)とおけば,
\(\alpha-\beta\lt\alpha-\beta\)が成り立つはずだが,明らかに矛盾。
したがって\(\,\alpha-\beta\leq 0\,\)すなわち\(\,\alpha\leq\beta\,\)となり\([2]\)は示された。
\([3]\)について証明する。
仮定より任意の正数\(\varepsilon\)に対して,ある自然数\(N_a,N_c\)を取ってくることで
\(|a_n-\alpha|\lt \varepsilon\quad(n\geq N_a)\)
\(|c_n-\alpha|\lt \varepsilon\quad(n\geq N_c)\)
とできる。
そこで\(N=\max\{N_a,N_c\}\)とおけば,\(n\geq N\)において
\(|a_n-\alpha|\lt \varepsilon\)より,\(-\varepsilon\lt a_n-\alpha \leq b_n-\alpha\)
\(|c_n-\alpha|\lt \varepsilon\)より,\(b_n-\alpha \leq c_n-\alpha \lt \varepsilon\)
であるので,これらを合わせて
任意の正数\(\varepsilon\)に対して,ある自然数\(N\)を取ってくることで
\(n\geq N\Rightarrow |b_n-\alpha|\lt \varepsilon\)が成り立つことを示すことができた。
したがって\([3]\)は示された。
最後に\([4]\)を示そう。\((\,\mathrm{i}\,)\)から示す。
仮定より任意の実数\(K\)に対して,ある自然数\(N\)を取ってくることで
\( b_n \geq a_n \gt K\quad(n\geq N)\)
とできる。よって\((\,\mathrm{i}\,)\)は示された。
\((\,\mathrm{ii}\,)\)も同様で,仮定より仮定より任意の実数\(K\)に対して,ある自然数\(N\)を取ってくることで
\( a_n \leq b_n \lt K\quad(n\geq N)\)
とできるので,\((\,\mathrm{ii}\,)\)も示された。
したがって\([4]\)も成り立つので,\([1]\sim[4]\)は示された。\(\quad\square\)
\([5]\)四則演算との整合性
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=\alpha,\lim_{n\to\infty}b_n=\beta\)とすると
\((\,\mathrm{i}\, )\quad \displaystyle\lim_{n\to\infty}(a_n\pm b_n)=\alpha\pm\beta\quad\)(複合同順)
\((\,\mathrm{ii}\, )\quad \displaystyle\lim_{n\to\infty}c\,a_n=c\,\alpha\quad\)(\(c\,\)は定数)
\((\,\mathrm{iii}\, )\quad \displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n\,b_n=\alpha\,\beta\)
\((\,\mathrm{iv}\, )\quad \displaystyle\lim_{n\to\infty}\dfrac{b_n}{a_n}=\dfrac{\beta}{\alpha}\quad(a_n\not=0,\quad\alpha\not=0)\)
[証明]\(\quad\)まず\((\,\mathrm{iii}\,)\)について証明する。
任意の正数\(\varepsilon\)を取ってこよう。
\([1]\)収束数列の有界性より,\(|a_n|\leq K\)となる正数\(K\)が存在するので
が成り立つ。
ここで仮定より,ある自然数\(N_a,N_b\)を取ってくることで
\(|a_n-\alpha|\lt \dfrac{1}{2}\cdot\dfrac{\varepsilon}{K}\quad(n\geq N_a)\)
\(|b_n-\beta|\lt \dfrac{1}{2}\cdot\dfrac{\varepsilon}{|\beta|+1}\quad(n\geq N_b)\)
とできる。
※\(\dfrac{1}{2}\cdot\dfrac{\varepsilon}{|\beta|}\)ではなく\(\dfrac{1}{2}\cdot\dfrac{\varepsilon}{|\beta|+1}\)としたのは,\(\beta=0\)の場合も証明が通るようにするためです。
そこで\(N=\max\{N_a,N_b\}\)として,自然数\(N\)を取ってくることで
先程の不等式より\(n\geq N\)のとき
\(|a_nb_n-\alpha\beta|\lt K\cdot\dfrac{1}{2}\cdot\dfrac{\varepsilon}{K}+|\beta|\cdot\dfrac{1}{2}\cdot\dfrac{\varepsilon}{|\beta|+1}\lt \varepsilon\)
つまり任意の正数\(\varepsilon\)に対して,ある自然数\(N\)を取ってくることで
\(n\geq N\Rightarrow |a_nb_n-\alpha\beta|\lt \varepsilon\)が成り立つことを示すことができた。
故に\((\,\mathrm{iii}\,)\)は示された。
ここで\((\,\mathrm{ii}\,)\)は\((\,\mathrm{iii}\,)\)で,\(b_n=c\)とおけば明らかである。
次に\((\,\mathrm{i}\,)\)を示そう。
\(-\)の場合は\(+\)の場合と\((\,\mathrm{ii}\,)\)を用いることで証明できるので,\(+\)の場合を示せば十分である。
仮定より任意の正数\(\varepsilon\)に対して,ある自然数\(N_a,N_b\)を取ってくることで
\(|a_n-\alpha|\lt \dfrac{\varepsilon}{2}\quad(n\geq N_a)\)
\(|b_n-\beta|\lt \dfrac{\varepsilon}{2}\quad(n\geq N_b)\)
とできる。
そこで\(N=\max\{N_a,N_b\}\)として,自然数\(N\)を取ってくることで
\(n\geq N\)のとき
つまり任意の正数\(\varepsilon\)に対して,ある自然数\(N\)を取ってくることで
\(n\geq N\Rightarrow |(a_n+b_n)-(\alpha+\beta)|\lt \varepsilon\)が成り立つことを示すことができた。
よって\((\,\mathrm{i}\,)\)を示すことができた。
最後に\((\,\mathrm{iv}\,)\)を示そう。
\(\displaystyle \lim_{n\to\infty}\dfrac{1}{a_n}=\dfrac{1}{\alpha}\)を示せば,\((\,\mathrm{iii}\,)\)により\((\,\mathrm{iv}\,)\)が示されるので,それを示す。
任意の正数\(\varepsilon\gt 0\)を取ってくる。
\(|\alpha|\gt 0\)より,ある自然数\(N_1\)を取れば
\(|a_n-\alpha|\lt \dfrac{|\alpha|}{2}\quad(n\geq N_1)\)
とできるので,
また,ある自然数\(N_2\)を取れば
\(|a_n-\alpha|\lt |\alpha|^2\cdot\dfrac{\varepsilon}{2}\quad(n\geq N_2)\)
とできる。
そこで\(N=\max\{N_1,N_2\}\)として,自然数\(N\)を取ってくることで
\(n\geq N\)のとき
\(\biggl|\dfrac{1}{a_n}-\dfrac{1}{\alpha}\biggr|=\dfrac{|a_n-\alpha|}{|a_n||\alpha|}\lt \dfrac{|\alpha|^2\cdot\dfrac{\varepsilon}{2}}{\dfrac{|\alpha|}{2}\cdot |\alpha|}=\varepsilon\)
つまり任意の正数\(\varepsilon\)に対して,ある自然数\(N\)を取ってくることで
\(n\geq N\Rightarrow \biggl|\dfrac{1}{a_n}-\dfrac{1}{\alpha}\biggr|\lt \varepsilon\)が成り立つことを示すことができた。
故に\((\,\mathrm{iv}\,)\)は示され,\([5]\)四則演算の整合性は示された。\(\quad\square\)
単調数列の性質
上に有界な単調増加数列はその上限に
下に有界な単調減少数列はその下限に収束する。
つまり有界な単調数列は収束する。
[証明]\(\quad\)まず上に有界な単調増加数列について示す。
\(\{a_n\}\)を上に有界な単調増加数列とすると,
\(A=\{a_n\,|\,n\in \mathbb{N}\}\)は上に有界な\(\mathbb{R}\)の部分集合なので,
\(\alpha=\sup A\)を取ることができる。
その取り方から,任意の正数\(\varepsilon\)を取ってくると,ある自然数\(N\)が存在して
\(\alpha-\varepsilon\lt a_N\)
かつ
\(a_n\leq \alpha \lt \alpha+\varepsilon\)
よって\(n\geq N\)のとき,増加性より
\(-\varepsilon\lt a_N-\alpha\leq a_n-\alpha\lt\varepsilon\)
が成り立つ。
つまり任意の正数\(\varepsilon\)に対して,ある自然数\(N\)を取ってくることで
\(n\geq N\Rightarrow |a_n-\alpha|\lt \varepsilon\)が成り立つことを示すことができた。
故に上に有界な単調増加数列\(\{a_n\}\)はその上限に収束する。
下に有界な単調減少数列についても同様に示せるので,題意は示された。\(\quad\square\)