【数列】【受験生必見!】差分入門 知っておくと便利な和の求め方
こんにちは!半沢です!
皆さんは数列の和を求めるときに「差分(differences)」を利用したことはありますか。
この「差分」は(等差)\(\times\)(等比)型の数列の和をめちゃくちゃ簡単に求めれるなど,
大学受験の際にかなり強力です。
その上「差分」を理解するのは簡単なので,
この記事を読んで身に付けてしまいましょう!
ぜひ読んでいってください。
差分(differences)
差分(differences)の定義は次のようになっています。
\(f'(k) \coloneqq f(k)-f(k-1)\)と定義する。
ただ\(f(k)\)と\(f(k-1)\)の差を「差分」と呼んでいるだけですね。
試しにこの差分の和を取ってみるとどうなるでしょうか。
すると
と打ち消しあい,次の式が成り立つことが分かります。
この式が差分のポイントです。
なぜなら求めたい和の項をなんらかの差分として書けたら,
\(f(k)\,\)に\(\,n\,\)や\(\,0\,\)を代入するだけで和を求めれることを表しているからです。
実は高校数学の数列を学習した方は,この公式を知らないうちに利用しています。
それは分数和\(\displaystyle \sum_{k=1}^{n}\dfrac{1}{k(k-1)}\)を求めるときです。
この和は\(\dfrac{1}{k(k-1)}=-\dfrac{1}{k}+\dfrac{1}{k-1}\)と部分分数分解をし,求めていたと思います。
これは単に\(\dfrac{1}{k(k-1)}\)は\(-\dfrac{1}{k}\)の差分と言っているだけです。
そしてその和を求めるときはまさに
のように,先ほどの説明と同じことをしただけですね。
知らないうちに私たちは差分を利用していたわけですね。
このように求めたい和の項が何らかの差分だと見抜けると,
その和を簡単に求めることができるというわけです。
見抜く作業は過去の偉人たちがやってくれているので,
次の章ではその応用例を確認していきましょう。
応用例
応用例を確認していきましょう!
例1: (等差)\(\times\)(等比)型の和
(等差)\(\times\)(等比)型の和として,例えば\(\displaystyle\sum_{k=1}^{n} k3^{k-1}\)を考えましょう。
この和の求め方で一般的な解法として知られているのは次の2つでしょう。
1.求めたい和を\(S\)と置いて\(S-(公比)S\)を計算することで求める。
2.微分を用いた解法
※この2つの方法は例えば高校数学の美しい物語さんの記事で紹介されています。
しかし(等差)\(\times\)(等比)型の和は差分で求めるのが最も簡単です。
実際に差分によって求めてみましょう。
まず「求めたい和の項が何の差分になっているか」見抜く必要があります。
そこで\(k3^{k-1}\)に似た\((ak+b)3^{k}\)の差分が\(k3^{k-1}\)となっていると予想します。
つまり\(\{({\color{#f2541d}a}k+{\color{#1e7bba}b})3^{k}\}’=k3^{k-1}\)が成り立つような定数\({\color{#f2541d}a},{\color{#1e7bba}b}\)はないか探すわけです。
そこで左辺を計算してみると
となります。
そのため任意の\(k\)について\(\{(ak+b)3^{k}\}’=k3^{k-1}\)が成り立つことは,
\((2ak+a+2b)3^{k-1}=(1\cdot k+0)3^{k-1}\)が成り立つことと同じですね。
よって
を満たすものを考えましょう。
この連立方程式を解くと\(a=\dfrac{1}{2},\,\,b=-\dfrac{1}{4}\)と,この条件を満たす\(a,b\)を求めることができます。
つまり\(\biggl(\dfrac{1}{2}k-\dfrac{1}{4}\biggr)3^{k}\)の差分が\(k3^{k-1}\)ということが分かります。
後は差分の和の公式を用いて
\(\displaystyle\sum_{k=1}^{n}k3^{k-1}=\biggl(\dfrac{1}{2}n-\dfrac{1}{4}\biggr)3^n+\dfrac{1}{4}\)
と求まります。
この方法はかなり計算量が少なくて楽です。
和を求める作業が,簡単な二変数一次方程式を解く作業に変わったことからも,その楽さが分かると思います。
同様に\(\displaystyle \sum_{k=1}^{n} k^{2}r^{k-1}\)も\((ak^2+bk+c)r^{k}\)と予想を立てることで,
三変数一次方程式を解く作業に落とし込めます。
まとめると次のようになります。
- 差分を使えば(等差)\(\times\)(等比)型の和を求めることを,
簡単な連立一次方程式を解くことに置き換えれる
※この方法で\(\{(ak+b)3^{k}\}’=k3^{k-1}\)が成り立つようなうまい定数\(a,b\)が存在しないときはどうするの?と不安になる方用に補足をしておきます。
実は\(\displaystyle\sum_{k=1}^{n} k^{p}r^{k-1}\)は差分を与える,うまい\((p+1)\)個の定数の組\(a_p,a_{p-1},\cdots,a_{0}\)が存在することを証明できます。
厳密には公比\(r\not= 1\)という条件が付きますが,
このときは\(\displaystyle \sum_{k=1}^{n} k^{p}\)となりますので,気にしなくてよいです。
具体的な証明方法は大学数学の線形代数学の知識を使うので省略しますが,概要だけお話します。
条件の連立一次方程式を行列で表示したとき
\( A\mathbf{x}=\mathbf{e_{1}}\) (\(\mathbf{e_{1}}\)は第一成分が\(\,1\,\)で他は\(\,0\,\)の\((p+1)\)項列ベクトル)と書けるので,\(\mathrm{det}\,A\not= 0\)であることを示して証明します。
例2: 連続する整数の積の和
続いての例は\(\displaystyle\sum_{k=1}^{n} k(k+1),\sum_{k=1}^{n} k(k+1)(k+2)\)といった連続する整数の積の和です。
簡単な\(\displaystyle\sum_{k=1}^{n} k(k+1)\)の方について考えましょう。
この和の差分は下のように無理矢理変形することで簡単に見つけることができます。
つまり\(\dfrac{1}{3}k(k+1)(k+2)\)の差分が\(k(k+1)\)ということが分かります。
したがって和は
\(\displaystyle\sum_{k=1}^{n} k(k+1)=\dfrac{1}{3}n(n+1)(n+2)\)
と求めることができます。
同様に\(\displaystyle\sum_{k=1}^{n} k(k+1)(k+2)=\dfrac{1}{4}n(n+1)(n+2)(n+3)\)と求めることもできます。
この形の和は入試上のちょっとした計算で出てくる可能性があります。
そのときに差分のテクニックを知っておくと,時間短縮でかなり便利ですので身に付けておきましょう。
その他の例
筆者の知ってる限りの他の例をまとめておきます。
「これもあるよ」という方はぜひ教えてください。
- \({}_n \mathrm{C}_k\)を用いた和
- 三角関数を用いた和
①についての例題
解答
別解: 例2: 連続する整数の積の和を利用する
②についての例題
解答(積和の公式を利用して差分をつくる)
まとめ
この記事を通して「差分」の力を理解していただけたでしょうか?
差分は広く通用するので,和を求めるときに頭の片隅に入れてるといいですよ。
もし「説明がわかりにくい」や「こんな例題も見つけたよ」などご要望・ご感想がありましたら,
X(旧:Twitter)で#トイカラでつぶやいていただけると,できる限り対応します。
ここまで読んでいただき,ありがとうございました。