【超基本_中学校レベル第8回】除法 除法の計算,除法と逆数

2023.06/21

こんにちは!半沢です!

この記事は数学超基本シリーズの中学校レベル第8回です。
高校生の皆様には簡単な内容ですが復習のつもりで読んでいただけると幸いです。

中学1年生の数学で習う除法(じょほう)逆数(ぎゃくすう)に関する例題を解説します。

除法(じょほう)

正負の数の割り算ができるようになりましょう。

足し算引き算のことを加法減法と言ったように,中学数学からは割り算も別の名前で呼びます。

中学数学からは割り算のことを除法(じょほう),そして割り算の結果のことを(しょう)と呼びます。

では,正負の数の除法はどのように行っていくのでしょうか。

商の求め方は次の3つのSTEPからなります。

STEP1:絶対値どうしの割り算

STEP2:符号の決定

STEP3:商の決定

例として\((-4)\div(+2)\)を考えてみましょう。

まずはSTEP1です。

\(-4,+2\)の絶対値はそれぞれ\(4,2\)ですから,\((-4)\div(+2)\)の式を絶対値の数に置き換えた\(4\div2\)を考えます。

そして,その答えは\(4\div2=2\)となります。

次にSTEP2です。

割り算の数が同符号どうしなら\(+\)異符号どうしなら\(-\)というルールで符号を決定します。今回は\(-4\)\(,\)\(+2\)異符号どうしなので\(-\)ですね。

最後にSTEP3ですね。

STEP1で求めた\(2\)と,STEP2で求めた\(-\)を合わせて,答えは\(-2\)となります。

【中1数学】乗法 負の数を含む乗法で解説した乗法とほとんど同じになっているので覚えやすいですね。

要点をまとめると下のようになります。

  1. 絶対値に置き換えて割り算を行う。
  2. 符号を決定する。
  3. 同符号どうしのとき\(\to\)\(+\)
    異符号どうしのとき\(\to\)\(-\)

  4. 1,2で求めた数と符号を合わせる。

逆数(ぎゃくすう)

逆数(ぎゃくすう)について理解していきましょう。

逆数とは?

逆数(ぎゃくすう)とは,ある数に対して,掛けると\(1\)になるような数のことです。

例えば\(2\)の逆数は\(2\times\,\dfrac{1}{2}=1\)となるので,\(\dfrac{1}{2}\)となります。また\(1\)の逆数は\(1\times1=1\)なので\(1\)自身ですね。

では負の数の逆数はどうなるでしょうか。

\(-2\)の逆数を考えてみましょう。

\(({\color{#1e7bba}-2})\times\biggl({\color{#1e7bba}-\,\dfrac{1}{2}}\biggr)={\color{#f2541d}+\biggl(2\times\,\dfrac{1}{2}\biggr)}=1\)となるので,\(-2\)の逆数は\(-\,\dfrac{1}{2}\)となります。

これらの具体例からわかるように,逆数を求めるときは符号はそのままにして,元の数の分母と分子を入れ替えることで求めることができます

  • 逆数とはある数に対して,掛けると\(1\)になるような数。
  • 逆数は符号をそのままにして,分母と分子を入れ替えることで求めることができる。

逆数と除法の関係

今,学習した逆数除法とどのような関係があるのでしょうか。

適当な割り算,例えば\(6\div3\)なんかを考えてみましょう。

\(6\div3=2\)であることは簡単にわかりますね。

では,\(3\)の逆数である\(\dfrac{1}{3}\)を\(6\)に掛けた式,\(6\times\dfrac{1}{3}\)の答えはどうなるでしょう。

この式の答えも\(6\times\dfrac{1}{3}=2\)となり,先ほどの\(6\div3\)の答えと一致していますね。

つまり,「\(3\)で割る」ことは「\(3\)の逆数である\(\dfrac{1}{3}\)を掛ける」ことと一致していると言えます。

実は,このことは正負の数の割り算のすべてにおいて成り立ちます

そのため,割り算とはその数の逆数掛ける操作だとも考えられます。

小学校の算数では「割り算」は,「\(6\)個のものを\(3\)人で等しく分けるときの一人あたりの個数は何個か?」という問題のような「分ける操作」だったと言えます。

この「分ける操作」という考え方だけでなく,中学数学からは「割り算」は「逆数を掛ける操作」という考え方を加えた,2つの考え方で「割り算」をとらえていきましょう。

除法での\(0\)の扱い

除法では\(0\)の扱い方がとても繊細なので,この節を通してその扱い方を学びましょう。

\(0\)を割る,\(0\)で割る

まずは\(0\)割ることについて考えてみましょう。

例えば\(0\div3\)のような式が考えられますね。

先ほどの2-2. 逆数(ぎゃくすう)除法(じょほう)の関係で紹介した「割り算」を「逆数を掛ける操作」とする考え方を用いると,\(0\div3=0\times\,\dfrac{1}{3}\)となります。

\(0\)に何を掛けても\(0\)ですので,\(0\div3=0\)となります。

このように「\(0\)に何を掛けても\(0\)」ということから,「\(0\)を割ると結果は必ず\(0\)になる」ということが分かります。

「\(0\)個の物を\(3\)人で等しく分けるときの一人当たりの個数は何個か?」のような算数的な考え方でも,そもそも分けるものが無い(\(0\))状態ですから,この考え方でも\(0\)になることが分かります。

次に\(0\)割ることについて考えてみましょう。

例えば\(3\div0\)という式を考えてみましょう。

「逆数を掛ける操作」として割り算を考えると,\(0\)の逆数を\(3\)に掛けた結果が答えとなります。

「\(0\)の逆数」とは,その言葉の意味から「\(0\)に掛けると\(1\)になるような数」ということになります。

しかし\(0\)に何を掛けても\(0\)ですので,そのような数は存在しません。そのため,\(0\)で割ったときの答えは存在しないということになります。

また「\(3\)個の物を\(0\)人で等しく分けるときの一人当たりの個数は何個か?」のような算数の問題を通して考えてみると,そもそも人が一人いないのに「一人当たりの個数」を考えるという非常におかしな問題になってしまいます。

このような理由から,数学では\(0\)で割ったときの答えは存在しないので,\(0\)で割ることはできません

そのため\(0\div0\)という式の答えも存在しません。

※数学の分野の一つの代数学から見ると,\(0\times\bigcirc=0\)となる\(\bigcirc\)が\(0\div0\)の答えだとする見方もあり,この場合,\(0\div0\)の答えはどんな数でもいいことになります。

しかし,この場合も値が一つに決まるという「計算(演算)」の定義に矛盾するので結局は\(0\)で割ってはいけないということに変わりありません。

\(0\)だけ割れないのは少々気持ち悪いと思う人がいるかもしれません。

そこで\(0\)の逆数\(\dfrac{1}{0}\)が存在すると仮定してみましょう。

すると下のような計算により,\(2=1\)というおかしな結果が得られることになります。

この説明によって\(0\)で割ることができない理由が少しは納得していただけたでしょうか?

このように\(0\)で割るということには非常に奥の深い議論が隠れています。

もっと高度な数学(高校,大学数学など)からの考察からでも\(0\)で割ったらどうなるのかを現在,決定できておりません。

このことについてもっと気になる人は調べてみると,その高度な数学からの考察などが含まれた,非常に面白い議論を見ることができます。

高度な数学への興味がより一層わくかもしれませんよ。

以上のことをまとめると次のようになります。

  • \(0\)で割ることはできない。
  • \(0\)を割った結果は\(0\)。
  • \(0\div0\)という計算も行ってはいけない。

例題

1. 次の計算を求めよ。

(1) \((-64)\div(-8)\)  (2) \(48\div(-6)\)

(3) \((-96)\div6\)  (4) \(0\div(-1)\)

2. 次の(1),(2)を計算し,結果を比べ,わかることを書け。

(1) \(16\div(-2)\)  (2) \(16\times\biggl(-\,\dfrac{1}{2}\biggr)\)

3. 次の計算を求めよ。

(1) \(\biggl(-\,\dfrac{6}{7}\biggr)\div\biggl(-\,\dfrac{3}{14}\biggr)\)  (2) \(\biggl(-\,\dfrac{8}{5}\biggr)\div(-4)\)

4. 乗法だけの式に直して計算を求めよ。

(1) \((-4)\div6\times(-10)\)

(2) \(\biggl(-\,\dfrac{5}{9}\biggr)\times\dfrac{3}{15}\div\dfrac{6}{5}\)

(3) \(\biggl(-\,\dfrac{9}{5}\biggr)\div\biggl(-\,\dfrac{3}{10}\biggr)\div3\)

(4) \((-3)^{2}\times(-2^{2})\div(-36)\)

例題1解説:整数の除法

1.除法(じょほう)で習ったことを丁寧に行っていきましょう。

例題2解説:除法と逆数

それぞれの式を計算すると,

(1),(2)の式を比べてみると答えが一致していることがわかりますね。

そしてさらに(1)の割り算が(2)では逆数の掛け算になっていることもわかりますね。

つまり,この2つの式からわかることとしては,2-2.で学んだように「割り算は逆数を掛けること」となります。

例題3解説:分数の除法

分数の除法は2-2.で学んだ「割り算は逆数を掛けること」ということを利用して,割り算を掛け算に直すことで見通しが良くなります。

そのため,慣れないうちは乗法(掛け算)に直してから計算していきましょう。

例題4解説:乗法・除法の計算

除法(割り算)は逆数を用いることで乗法(掛け算)に直すことができるのでしたね。

この問題では問題文に「乗法だけの式に直して」と書かれているので,そのことを利用して,きちんと乗法に直してから計算するようにしましょう。

累乗の計算は乗法の計算より先に行うというルールなので,累乗の計算は除法の計算よりも先に行うということをしっかり押さえておきましょう。

また複数の数の乗法を行うときは,負の数の個数が偶数個の時正に奇数個のとき負になるということもしっかり押さえておきましょう。

例題の解答を見る

1

2

結果を比べてわかることは,確かに割り算は逆数を掛けることと同じになっているということ。

3

4

練習問題にチャレンジ

1. 次の計算を求めよ。

(1) \(72\div(-8)\)  (2) \((-49)\div(-7)\)

(3) \(0\div(-5)\)  (4) \((-28)\div14\)

2. 次の(1),(2)を計算し,結果を比べ,わかることを書け。

(1) \(12\div(-3)\)  (2) \(12\times\biggl(-\,\dfrac{1}{3}\biggr)\)

3. 次の計算を求めよ。

(1) \(\biggl(-\,\dfrac{11}{9}\biggr)\div\dfrac{5}{27}\)  (2) \(\biggl(-\,\dfrac{15}{8}\biggr)\div(-21)\)

4. 乗法だけの式に直して計算を求めよ。

(1) \((-5)\times12\div15\)

(2) \(\dfrac{2}{9}\times0\div\biggl(-\,\dfrac{5}{18}\biggr)\)

(3) \(\biggl(-\,\dfrac{1}{11}\biggr)\div\biggl(-\,\dfrac{5}{8}\biggr)\times\dfrac{13}{8}\)

(4) \((-7)^{2}\div(-14^{2})\times(-4)^{2}\)

練習問題の解答を見る

1

2

結果を比べてわかることは,確かに割り算は逆数を掛けることと同じになっているということ。

3

4

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